014 京浜東北線のワンマン化は、人材不足が理由というより人員削減が目的

ここ最近の記事では、世の中に出回っている情報が不完全であることが多いと書いてきました。

 

前回の記事では、『鉄道各社がコロナ禍を理由に減便を行っている』と度々 言われる中、実際はコロナ禍以前から鉄道の減便は行われていた、あるいはコロナ禍以前から収支状況が良くない鉄道会社・鉄道路線は多数存在していたことを書きました。

 

今回も、鉄道に関する話題で、報道で言われている大嘘をひとつ紹介します。

 


 

首都圏や東北地方、信越地区の鉄道路線と、東北・上越新幹線北陸新幹線の一部区間を管轄化に置くJR東日本は、京浜東北線のワンマン化を計画しています。この件が報道され始めたのは、2020年6月下旬のことのようです。

参考:

「京浜東北線のワンマン運転化」を、JR東日本が検討する理由 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

 

報道によると、人口減少に伴う人員不足のため、乗務員を減らしていくとのことです。

 

しかし、京浜東北線のような主要路線で、いきなり車掌不在・運転士のみのワンマン運転に切り替えるのはどうかと思います。

 

既に水戸線では、2021年3月にワンマン運転が導入されたのですが、JR東日本・千葉地区の労働組合国鉄千葉動力車労働組合)は、安全を軽視するJR東日本の姿勢を厳しく批判しています。

doro-chiba.org

 

 


 

鉄道におけるワンマン運転は、主に閑散路線、いわゆるローカル線で採用されています。乗客の乗降が少ないため、わざわざ運転士と車掌の2名を乗務させる必要がないという理由で、運転士のみのワンマン運転を行っているというケースが圧倒的多数です。

 

その他にあるとしたら、ほぼ全駅が無人化=自動化されて、人員が必要でない路線です。新交通システム(東京のゆりかもめ、横浜のシーサイドライン、神戸のポートライナーなど)では、乗務員不在の完全な自動運転が行われています。いずれも編成全体としては短く、1本の列車に乗り降りする乗客の数は、京浜東北線ほど大量という訳ではありません。


確かに京浜東北線も、乗降確認カメラやホーム自動ドアの設置などの省力化を行ったうえでワンマン化する訳ですが、都心を貫く長編成の主要路線で車掌不在のシステムを導入するのはいかがなものかと思います。

 

運転士が運転席に座ったまま、ホームの様子を見ることができるようにするとは言え、平日朝夕の混雑の激しい路線で運転士単独で運行するのは、かなり無茶な気がしてなりません。それこそ、安全を軽視していると言わざるを得ません。

 

先に紹介した通り、『国鉄千葉動力車労働組合』もJR東日本の姿勢を安全軽視だとして、強く批判しています。

水戸線5両ワンマンで多くの車掌が自宅待機・出勤予備に | 国鉄千葉動力車労働組合


ワンマン運転が原因で起きたトラブルなどの事例も複数 報告されています。

 


 

ワンマン運転は、JR東日本以外でも多くの鉄道会社が導入していますが、前述の通り、閑散路線で行っているケースがほとんどです。

 

JR東海では、御殿場線身延線関西本線(名古屋・亀山間)など複数の路線でワンマン運転を導入していますが、全列車でワンマン運転を行っている訳ではなく、朝のラッシュ時には車掌も乗務する形態をとっています。

 

JR東日本が首都圏でワンマン運転を行うのであれば、八高線や相模線、内房線外房線などが考えられます。現に2021年秋から、相模線・日光線などに、ワンマン運転に対応した新型車両が順次 導入されています。

 

ただし相模線の場合、全線が単線で、そのうえ4両という短い編成で運行されている小規模路線であるとは言え、南は東海道線茅ヶ崎と接続し、北は横浜線の橋本、一部は中央線の八王子とも接続し、朝ラッシュ時の混雑はかなり激しくなります。

内房線外房線なども、朝は東京に向かう通勤客で混雑する路線として知られています。

 

そのため、ワンマン運転に対応した新型車両を導入するにせよ、ワンマン運転そのものは、昼間や夜間などの閑散時間帯に限定するべきだと私は考えています。

 


 

そしてJR東日本は、都心を10両編成で運行し、かつ運行頻度の高い京浜東北線においても、ワンマン化を進めようとしているのです。運転士の負担は計り知れません。

 

先に紹介した『国鉄千葉動力車労働組合』の記事の中でも、ワンマン運転を行う運転士の負担が指摘されています。

 

そして、将来的には無人運転(自動運転)を導入する方向で検討しているとのことです。
参考:

「京浜東北線のワンマン運転化」を、JR東日本が検討する理由 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

 

JR東日本が『人材不足』を理由として、それに追随してマスコミも人材不足だからワンマン化すると言っていますが、本音を言うならば、人材が不足している、人材が減っているのではなく、人材を減らしたい、コストを減らしたいということなのではないでしょうか。


現に、人口が減少しているとは言え、一方で失業率は高いままで、仕事を探している人もたくさんいるのです。乗務員として採用するには、集中力など、ある程度は必要な資質というものはありますが、失業率が高いと言われる中で『人材不足』というのは、矛盾でしかありません。

 


 

加えて、昨今では日本政府が移民の受け入れを進めており、安倍内閣から岸田内閣にかけて、移民受け入れはじわじわと増大しています。

岸田内閣が事実上の「移民解禁」 特定技能2号の分野拡大・在留期限をなくす | RAPT理論のさらなる進化形

もともとは建設業や造船業など限られた分野に従事する外国人のみを受け入れていたに過ぎないのですが、農業や漁業、飲食料品製造業、産業機械製造業、外食業、宿泊など、より多くの分野に携わる外国人を受けれるというのです。

 

この勢いで外国人の受け入れを進めれば、JR東日本が言っている人口減少は、いつか人口増大に転じるかもしれません。

 


 

外国人受け入れ・移民受け入れは、やや脱線した内容かもしれませんが、京浜東北線のような、比較的 長大で、しかも高頻度に運行している路線で急にワンマン運転に踏み切り、いずれは無人化まで進めるとなると、人材を自ら減らすつもりでいるとしか思えません。

 


 

今回 書いた京浜東北線のワンマン化にせよ、前回の記事で書いたコロナ禍での鉄道減便にせよ、鉄道会社が言うままにマスコミが報道し、それを聞いて鉄道オタクなどの一般人がネット上で、鉄道会社・マスコミの報道をそのままコピペした内容の情報を発信しています。

 

もう少し前の記事で書いた、健康・栄養・食材に関する話題も、管理栄養士などの資格を持った人が書いている不完全な情報を、一般の人がそのままコピペして発信しているため、よくよく考えるといまいち理解できない話、不完全な情報があちこちに出回っています。

 

それだけ、人々が物事を深く考えなくなってしまったのだと、私は危惧しています。