教科書の35ページから79ページまで何ページあるか計算する際、
79-34=45
とすれば1回で求めることができます。
この数え方は極めて単純ですが、高校の数学でも使うことが可能です。
35ページから79ページまでなのだから
79-35=44 と計算しそうになりますが、
この計算は35ページを除外して36ページから79ページまでのページ数を求めていることになります。
もっと数字を小さくして、5から9まで整数はいくつあるか。
9-5
とすると5を除外し6から9までの整数の個数を求てしまいます。
1 2 3 4 || 5 6 7 8 9 || 10 11 ...
このように区切って、縦棒の左にある数字同士を引いて
9-4
と計算するべきなのです。
数学に対して皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。
中学の主要5教科と言われる教科(英数国理社)の中で、最も敬遠され 苦手とする人が多いのは 数学です。
個別指導の塾で中高生の間で最も需要が多いのも数学です。
016【カテゴリー:教育】解法暗記が幅を利かせている大学入試数学でも書いたように、高校に上がると それまでとは比較にならないほど勉強量が増え、授業の進度も速くなり、理解する暇もなくただ公式を暗記させられるケースが多くなります。
また、今の高校数学、特に数学ⅡBは、それがどのように役に立っているのか分からず 達成感も得られない、ただの煩雑な計算問題に成り下がっている傾向が見られます。
このような数学に対し、ややこしい・複雑といったイメージを持つ人は多いことと思います。
私自身が高校の時 特に数学で苦労しましたし、
また、高校2年次からの文理選択の際、数学が苦手だからという理由で文系を選択する人は少なくありません。
それどころか、理系に進む人の中でも数学が苦手という人は一定数 見られます。
小学算数・中学数学・高校数学において、数学(算数)は積み重ねの教科だと言われます。
このことは他の教科にもあてはまりますが、中1内容でつまづいていれば中2中3内容で解らない箇所が生じますし、
小学内容で解らない箇所があれば中学内容の理解に支障を来たします。そのまま進めば高校内容の理解に影響します。
例えば、高校の数学Ⅰでは以下のような式の変形が出てきます。
(a-b)(b-c)(a-c)=-(a-b)(b-c)(c-a)
イコールの左側(左辺)とイコールの右側(右辺)にはそれぞれ3つの項目があり、
左辺には a-b b-c a-c
右辺には a-b b-c c-a の3つの項目があります。
それぞれの項目の間に掛け算の記号が省略されています。
そして、左辺と右辺では a-c と c-a の順序が入れ替わっており、右辺の頭にはマイナスの記号が付いています。
この式の変形で戸惑う高校生がいるのですが、これは中1数学で習う正負の数の引き算と掛け算で簡単に説明ができます。
a-cを5-3に、c-aを3-5に見立ててみましょう。
5-3=2,3-5=-2 のように、引き算で順序を入れ替えると、結果のプラス・マイナスが入れ替わります。
そして、ー2にー1を掛けるとプラスの2になります。あるいは
ー(ー2)=2 と表現してもいいでしょう。
このように、引き算の順序を入れ替えると結果の正負が逆転し、更にマイナスの記号をひとつ付け加えれば元に戻ります。
そのため
5-3=-(3-5) となり、
同様に
a-c=-(c-a) となります。
高校数学の例ひとつとっても、このように中1内容で説明のつくものが存在するのですが、教科書や大半の参考書は 既習内容は理解していることを前提として書かれているため、分からない箇所があればどこかでギャップを埋める必要があります。
それを自力でできる人もいれば、丁寧に説明してくれる先生も稀にいます。
自分でできなければ解らないままですし、学校の先生の多くは そこまで丁寧に説明してくれません。
さて、タイトルに挙げた『単純な数え方』に話を戻します。
教科書の35ページから79ページまで、合計で何ページあるか。
これを求める際、中学以降の数学では
79-(35-1) あるいは 79-35+1
のような形の公式が使われます。
79-(35-1) も 79-35+1 もいずれも45ですし、
実際に35ページから79ページまで順に数えてみればページ数は45になるのですが、
公式を覚えるようなやり方ばかりを重ねていくと いずれは複雑になり、覚えるのも困難になってきます。
ところが、高校の数学では 連続する整数の個数が絡んだ公式が複数 登場します。
公式として覚えてしまえば、あとは充てはめるだけですが、それでは応用が効かない場面に遭遇することもあるでしょう。
公式を使うだけでなく実際に何個あるかを考える必要があるときに、冒頭で書いた数え方が有効になります。
もっとも、この記事のタイトルにしている 冒頭で紹介した数え方を まともに説明している人に 出会ったことはありませんが。
現行課程では数学Bにある『数列』で、以下のような例があります。
2,4,8,16,32,64 ....
初めの項目(初項)は2、それに2をひとつずつ掛けた数を左から順に並べたもので、等比数列と呼ばれるものです。
等比数列では掛ける数字(この例では2)のことは公比と呼びます。
2,4,8,16,32,64 .... の代わりに 21,22,23,24,25,26 .... と表すことも可能です。
そして、これらを一般化して 2n と表します。
この等比数列では、初項は2、第2項は4、第3項は8、第n項は2n となります。
そして、この 2nで表されるものを初項の2から順に足していき、
21+22+23+24+25+26 + ... +2n
これがどのような値をとるか求める(計算する)問題が出てきます。シグマ記号(Σ)を用いて表すものです。
ここで
という公式を使います。
aには初項、ここでは2、
rには公比、ここでは2をあてはめます。
nには項目がいくるあるか(項数)をあてはめます。
初歩的な問題では初項から第n項までの和を求めることを要求されるだけで、
上に掲載した公式のaの箇所に2を、rの箇所に2を代入し、nはnのまま残せば良いので、
公式をそのまま用いるだけの問題ということになります。
21,22,23,24 ... 2n のようなケースであれば、
いくつあるか、項数がいくつかを数える必要はありません。
敢えて数えるのであれば、初項から第n項、
つまり1からnまでなので、
n-1ではなく
n-0 で
n個となります。
ただ公式を覚えていれば済む問題です。
しかし、場合によっては以下のように、いくつあるのか、項数がいくつかを数える必要が出てきます。
20+21+22+23+24+25+26+27+28
2-3+2-2+2-1+20+21+22+ ... +2n-2+2n-1
このような事例では、上記の公式を覚えていたとしても、そもそも20から28まで、2-3から2n-1まで、それぞれ何項目あるか(項数がいくつか)を正確に考えることができなければ、公式の n の箇所に何をあてはめるべきかが判らず、正しい結果を導くことができません。
ここで、冒頭で紹介した数え方が役に立ちます。
20から28までなら、0から8まで だから
8-(-1) で9個
2-3から2n-1までなら、-3からn-1まで だから
n-1-(-4) で(n+3)個
となります。
016【カテゴリー:教育】解法暗記が幅を利かせている大学入試数学でも書いたように、公式を暗記するだけでは考える習慣がつきません。
しかし逆に、冒頭で上げた、
5から9まで整数はいくつあるか求める方法を
9-4 として考える習慣がついていれば、上のようなイレギュラーな事例にも対処できますし、公式そのものの理解にもつながります。
この連続する整数の個数の数え方は、等比数列の和のほかには、
数学ⅠA 集合の要素の個数
数学A 場合の数
数学A 整数の性質
など、整数や個数などが絡む分野で使える場面があると思います。
繰り返しになりますが016【カテゴリー:教育】解法暗記が幅を利かせている大学入試数学でも書いたように、
高校の数学では、理解が追い付かないまま多数の公式や定理を暗記させられます。
そこに問題ごとの解法(多くの場合テクニック)までもが必要になります。
そのため、高校数学は何かと煩雑となり、苦手とする人が続出します。
しかし、ここまで書いてきたように、本来はシンプルなことをいくつも積み重ねている部分もあり、
すべてが難解という訳ではないはずです。
現状よりも物事を深く考える習慣を付けるための教育が行われていれば、ここまで数学嫌いな人はいなかったかもしれませんが、
教育そのものの改善も期待できません。
前回の記事でも書いたように、学校の成績は頭の良し悪しだけで決まるものではありません。
繰り返しになりますが、これからは一人ひとりの個性が重要になってくるだろうと思います。
数学を究めたければ究めれば良いのですが、
一方で、数学嫌いの人が無理に克服する必要まではないと思います。
とは言え、たとえ数学が嫌いでも、今回 紹介したような、小学内容から連綿と続く基礎的な項目の積み重ねに気付くことができれば、数学嫌いは克服できるかもしれませんね。
今後も、数学、英語、日本語などの話題を中心に、普段 私が考えていることや気付いたことを少しずつ書いていく予定です。