前回の記事<009 メディアは大嘘つき - utchey_montreal’s blog> では、この世に出回っている情報の中には大嘘が混ざっているということを、メディアの報道を例に書きました。
今回は、複雑で分かりにくい情報、調べてもスッキリしない情報、あるいは不完全な情報を紹介します。題材は、小中学校の家庭科の教科書・資料集にも載っている、食と栄養・健康に関するものです。
● ビタミンAと呼ばれるものは、
直接ビタミンAとして働くレチノールと、
体内で必要に応じてビタミンAに変わるカロテノイドに
大別される
● レチノールもカロテノイドも脂溶性で、
油脂と併せて摂ると吸収が良くなる
● カロテノイドは必要に応じてビタミンAに変わるため
過剰に摂取しても問題ないが、
ビタミンA(レチノール)は過剰に摂取すると
頭痛や吐き気などを引き起こす
● レバーにはビタミンAは多いが脂肪分は少ないため、
レバーを大量に食べてもビタミンAの吸収は良くないはず、
ただし、この辺りの情報がなかなか見つからない
栄養の話は、馴染みのない人も多いと思うので、今回の記事の要点を、先に箇条書きにしてみました。
ビタミンAは、一般にはレチノールという物質の通称で、皮膚の健康・目の働き・免疫などに関わっています。また、緑黄色野菜などに多いカロテノイドは、それ自体はビタミンAではないのですが、体内で必要に応じてビタミンAに変わるので、プロビタミンAと呼ばれることもありますし、レチノールとカロテノイド(プロビタミンA)をまとめてビタミンAと呼ぶこともあります。
ちなみに、『カロテノイド』は、以前は『カロチノイド』という呼び方が主流でしたし、ニンジンやカボチャなどに多く含まれる『β-カロテン』は、以前は『β-カロチン』という呼び方が主流でした。
トマトやスイカになどに多く含まれる『リコペン』は、以前は『リコピン』と呼ばれていて、最近は『リコピン』と『リコペン』の両方の呼び方が、同じくらいの頻度で使われているようです。
そして、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンやリコペンなどを総称してカロテノイドと呼ぶそうです。
また、レチノールはレバーや卵、うなぎなど動物性食品に多く含まれる傾向にあり、カロテノイドは緑黄色野菜や一部の果物など植物性食品に多く含まれる傾向にあります。
ここから先では、主に『ビタミンA(レチノール)』と『プロビタミンA(カロテノイド)』という用語を使用します。
ビタミンA(レチノール)もプロビタミンA(カロテノイド)も脂溶性で、特にプロビタミンA(カロテノイド)については、脂肪と合わせて摂取すると吸収が良くなるということが色々な所に書かれています。
実際、ニンジンの黄色の素であるβ-カロテンやトマトの赤色の素であるリコペンは吸収が良くないため、大量に食べると便の色が変わります。一方で、ニンジンをすりおろして多めのサラダ油と混ぜて加熱すると、油にβ-カロテンが溶け出して、それを食べた後はβ-カロテンが油とともにしっかり吸収されるため、便の色に変化は見られません。
ビタミンA(レチノール)は注意が必要で、摂りすぎると頭痛や吐き気などの原因となるため、ビタミンA(レチノール)を多く含む食品は一度にたくさん食べないよう推奨されています。カロテノイドについては、多めに摂取しても問題ないそうです。
ここで、上で既に書いた通り、ビタミンA(レチノール)も脂溶性なので、油と合わせて摂らないと吸収は良くならないはずです。
ビタミンAが多い食品の代表格と言えばレバーでしょう。レバーにはビタミンAが豊富に含まれるので、色々な所に、食べ過ぎないようにと書かれているのですが、実は、レバーは脂質を少量しか含まないので、レバーをたくさん食べても、そこに含まれる脂溶性のビタミンA(レチノール)はあまり吸収されないはずなのです。
しかし、必ずと言って良いほど、食や栄養に関する書籍等にはビタミンA(レチノール)の摂りすぎに対する注意喚起が書かれていて、どういうことなのか、長い間 疑問でした。
この疑問を解決したくて調べたところ、レチノール(ビタミンA)は吸収が良くカロテノイド(プロビタミンA)は吸収が良くないという情報がようやく見つかりました。かなり時間を費やして調べてようやく出てきた情報です。
言われてみれば中学の時、家庭科の資料集にも『カロテノイドはレチノールに比べて吸収が良くないためビタミンAの効力を計算する際、カロテノイドはレチノールの3分の1にする』と書かれていたのを思い出しました。
しかし、レチノール(ビタミンA)の吸収が良い理由については、やはり見つかりません。更には、レバーの食べすぎとは1日あたり何グラム以上なのか、その目安すら書かれていません。調べている者としては、はぐらかされているかのような気持ちです。
この記事で書いてきた、ビタミンAがレチノールとカロテノイドに分類されるという話も、カロテノイドを多く含む緑黄色野菜は、油と一緒に摂取するのが良いという話も、ビタミンAは過剰に摂取すると頭痛や吐き気などが起こりうるという話も、どれも、中学校の家庭科の教科書や資料集にハッキリと書かれている話です。
しかし、カロテノイド(プロビタミンA)は吸収が良くないのに対してレチノール(ビタミンA)は吸収が良いという話はあまり見かけません。探すのに少々 苦労するくらいです。また、レチノールの吸収が良い理由は、どれだけ探しても見つかりません。
この点において、ビタミンAに関する情報は不完全だと言えるでしょう。あるいは、ビタミンAについてあれこれ書いている専門家は不親切であるとも言えるでしょう。
● ビタミンAと呼ばれるものは、
直接ビタミンAとなるレチノールと、
体内で必要に応じてビタミンAに変わるカロテノイドに
大別される
● レチノールもカロテノイドも脂溶性で、
特にカロテノイドは油脂と併せて摂ると吸収が良くなる
● カロテノイドは必要に応じてビタミンAに変わるため
過剰に摂取しても問題ないが、
ビタミンA(レチノール)は過剰に摂取すると
頭痛や吐き気などを引き起こす
● レチノールは吸収が良い
ビタミンAにまつわる話は、ここまで書いてきたように少々 複雑なので、なじみのない人には、今回の内容は頭に入りにくいと思われます。最初にも箇条書きで要点をまとめましたが、もう一度まとめてみました。そして、箇条書きの4点目の情報だけが、簡単には見つかりません。
食材と栄養に関する書籍は色々なものが出回っていますが、必要な情報がまとめられているものはなかなか見つからないのが現状です。情報を完全にまとめて書けないものかと、栄養学の専門家たちに言いたいです。
次回は、食に関する情報に、別の観点から突っ込みを入れます。